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2008年7月 5日 (土)

「ハヤカワ」との出合い

さて。夢破れて。懐古趣味に走る。ぼくが出合った、輝かしいSFたち。振り返ってみよう。
意識して読んだ最初のSFが何だったか、覚えていない。ミステリー好きとしては、おそらく、中学生のころから、何冊かの「空想科学小説」も手にしたはずである。だが、当時、まずは「純文学」、そして推理小説に忙しかった。いちお、学校の勉強もあったし。

思えば、10代の終わりに、大きな角を曲がったようである。
「SFとの遭遇」については以前、ちょっとだけ触れた。その日、浪人中の初夏だったか、友人と渋谷のセンター街を歩いていた。いまと違って、少し猥雑な香りのする界隈で、ハチ公前交差点から入って5分くらい歩いたところにある「ウィーン」という喫茶店をヒイキにしていた。午前中はコーヒーが半額になるのだ。たしか、正価が80円だったかな。浪人生は懐が寒い。つまり40円で、2時間はネバった。その友と、いろいろな話をするのが、週に1回か2回かの「日課」だった。
その、中高時代からのつきあいで浪人仲間でもあった彼とは、センター街の入り口にあった喫茶店「ホーカー」にもよく行った。ほとんど毎日のように会っていたからね。あと、宮益坂をあがったあたりの雀荘にも通ったものだ。もちろん、予備校にも、ときどきは。これで、よく、大学生になれたものだ。
もうひとつ、南平台に、当時としてはシャレた構えだったと思うが、「チビ」という名の、文字どおりの小さな店があって、ここではストレートコーヒー、たいていはキリマンジャロを飲んだ。150円だったかな。まだ120円だったかも。ぼくにとって、閉店までの6年間あまり、いくつかのドラマの舞台になった。が、その話はおいといて。

「ウィーン」の手前で、ぼくらは中高時代の2人の先輩に遇った。卒業以来1年と少々、久しぶりの邂逅。あっさりとは説明できない関係なので、親しい間柄の先輩とだけ。その2人も、ぼくら同様、よくつるんでいた。ぼくらの学校は、渋谷を基点にするエリアにあったので、まあ、それほど「ありえない話」ではないけれど、やはり、かなりの偶然ではあったろう。
4人で「ウィーン」に入り、雑談。内容は覚えていないが、ぼくらの関係にかかわるネタだったろう。そのひとつに、本がある。文学というほうが適切かな。「いま何を読んでいる?」「あれは面白い」といったような話になるのは当然。
そのなかで、M先輩が口にした言葉が、大袈裟かもしれないけれど、ぼくの人生を変えた。「おまえは、SFを読むべきだ」。そう言われた。ミステリーはあくまでも「娯楽」で、メインは「純文学」していることをよく知る先輩である。
この先輩、実は、漫画を描いていて、有名な漫画家の、まあ、弟子みたいなことをしていた。その漫画家の作風は、SF的といっていいだろう。先輩自身、高校生のときから「プロ」だった。ちゃんとギャラを稼いでいたのだから、「趣味」の範疇ではない。もちろんペンネームでだが。後に、先輩宅に遊びに行くと、手塚治虫の全集がズラリと並んでいた。この先輩も医学部志望だったのだ。目標の大学に進めなかったことで、あえて浪人していた。結局は、小学校の教師になったが、ラジオドラマの脚本を書いたりと、いわゆるマルチな才能をもつ人だ。
この当時は、それほど心酔していなかったが、一目置いていたことは確かで、その人の助言、というのかな、ナンだろう、ま、とにかくも、薦めだから、素直に従うことにした。

Photo_5Photo_4その足で渋谷・紀伊国屋または三省堂に行ったかどうかまでは、覚えていない、が、この2店は「いきつけ」だったので、おそらくは。
残念なことに、何から読み始めたのか、記憶にない。しかし、たぶん、小松左京だろう。それも、ハヤカワのポケット・シリーズ。いまなお(数奇な運命の末ではあるが。その話もまたいずれ)、ぼくの本棚に数冊、鎮座している。
購入の順番は不明だが、いずれも短編集で『地には平和を』(発表1963年)、『影が重なる時』(1964)、『日本売ります』(1965)などだ。これらを、1970年の夏から秋にかけて、その後も含めて、ぼくは読んだ。はまった。完璧に、魅せられた。
果たして、筒井康隆、星新一、眉村卓、豊田有恒へと突き進み、もちろん海外の、クラーク、ハインライン、アシモフ、あぁキリがない!

「純文学」は70年代半ば以降、次第に色褪せていく。「共産党宣言」に代表されるジャンルも、ほんの一瞬。ノンフィクションは、ときおり。
この38年、ぼくは、ずっと、その、虚構の極みの世界を愛し続けている。

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コメント

こんにちは

そうでしたか・・・
hiperkさんの愛して止まない本はSFでしたか

私はSFは映画専門です
「スターウォーズ」「未知との遭遇」「2001年宇宙の旅」「猿の惑星」「時計じかけのオレンジ」「バック・トゥ・ザ・フューチャー」「マトリックス」「渚にて」
挙げればきりがありませんが・・・

でも、本で読む楽しさはわかります
ファンタジー?は、結構本で読みました で、その後映画化された作品を観てがっかりした方が多かったですから・・・ゲド戦記、果てしのない物語、モモ、ナルニア国物語、全部そうでした
そうそう、ハリーポッターも^^
映画に圧倒されたのは、指輪物語の映画化「ロード・オブ・ザ・リング」だけでした
本は想像力を掻き立ててくれますが、その想像をはるかに超えた映像をファーストシーンから観せられ度肝を抜かれました
・・ごめんなさい~映画とファンタジーの話ばかりになってしまいました

投稿: vanilla | 2008年7月 7日 (月) 16時48分

vanillaさんも、けっこうSF好きなんですね。「時計じかけのオレンジ」なんて、かなりマニアックでは?
文字と映像の違い、これは如何ともしがたく。別物と思うほかありませんね。

ファンタジー系は実は、あまり。。。子ども向けの要素が強くありません? 「ナルニア」は評判だったのでトライ、でも30分くらいで意識不明に。「フィールド・オブ・ドリームス」には感動しました。それから、ジャック・フィニィもこの分野に入るようですが、小説『ゲイルズバーグの春を愛す』はマイベスト30くらいにはランクインしています。

蛇足ながら、こういう話は大好きですから、ご遠慮なく、くれぐれも。

投稿: hiperk | 2008年7月 7日 (月) 23時10分

>vanillaさんも、けっこうSF好きなんですね。
映画はどんなジャンルも観るんです^^
「フィールド・オブ・ドリームス」は観ていません、この映画のことは知っていますが・・ちょうどその頃は映画を観る余裕のない忙しさの中にいました

>小説『ゲイルズバーグの春を愛す』はマイベスト30くらいにはランクインしています。
そうなんだ!( ..)φメモメモ 
今度図書館に行く楽しみができましたhappy01


投稿: vanilla | 2008年7月 9日 (水) 16時45分

おっ、あっ、でも、ま、いいか、図書館なら。
ジャック・フィニィは、ほかにも長編の『ふりだしに戻る』やその続編『時の旅人』もイイですよ。
『盗まれた街』は1956年以来、何回か映画化されている「ボディ・スナッチャーズ」の原作です。07年には「インベージョン」として公開されました。どれか1つは、観てらっしゃるでしょ?

投稿: hiperk | 2008年7月10日 (木) 00時10分

では、明日まとめて借りてきますね
図書館で(笑

「インベージョン」二コール・キッドマンでしたね!
これも見逃しているのです
って、家でレンタルでいくらでも観れますのにね 
でも、最近は映画館でしか観なくなってしまいました^^

投稿: vanilla | 2008年7月11日 (金) 00時17分

借りてこられましたか?
映画は、逆ですね、最近はすっかりレンタル派で、名画座などに足繁く通ったのは夢のまた夢のような過去のことに。どこかで書いた記憶があるのですが、最大の理由は、映画鑑賞のマナーの低下でして。最悪なのは、エンドロール中に席を立つ馬鹿者。すっかりイヤになってしまいました。そんなわけで、自宅にホームシアターを設けるのが夢なんです。

投稿: hiperk | 2008年7月11日 (金) 22時31分

※最近、ありがたいことにコメントが増え、メインの記事更新の頻度は依然低いものの、全体としては新しい文章に触れる機会が多くなったためか、アクセス頻度も向上しています。もちろん、まちがいなく「辺境」のブログですが。定期巡回者もそれなりに、ということで、一言。小生、ただいま、知る人ぞ知る、年に2回の修羅場ど真ん中でして。レスポンスが相当に悪くなっております。ご容赦。

投稿: hiperk | 2008年7月11日 (金) 22時32分

こんばんは^^

何だか私ばかりコメント書かせていただいて
いいのでしょうか?
seigu さんはお元気ですか?
また、最近お見かけしませんね・・・

図書館に行ったら、なんと、ジャック・フィニィの本が一冊しかなかったのです
しかも『時の旅人』でした
『ふりだしに戻る』の続編とお聞きしていましたので、続編から読むというのもどうかと思いつつも、一応借りてきましたが、hiperkさんのベスト30に入る『ゲイルズバーグの春を愛す』をネットで注文しようかと思っています

>最悪なのは、エンドロール中に席を立つ馬鹿者
私は最後の最後まで観てきます
エンドロールは大切なエンディングですものね
でも、人がさっさと帰ることは全然気になりません
嫌なのは、ポリポリとお菓子などを食べる人、音がしなければOKなのですが、ガサゴソ、ポリポリには参ります・・・

自宅にホームシアター、いいですね!
やはり、相方さんと二人で観られるのですか?いっぱい飲みながらね^^

投稿: vanilla | 2008年7月11日 (金) 23時39分

修羅場、早く乗り切れますように祈っておりますhappy01

投稿: vanilla | 2008年7月11日 (金) 23時46分

vanillaさん、ご心配なく。翁は定期的に巡回していらっしゃいます。発言は、そのときの気分次第ですから。って、こゆ表現では、あまり好い印象ではないかな。。。半ば隠居ながら、原稿を書く仕事をお持ちなので、そーそーつきあってもいられない、ってところですかね。

図書館のこと、ほぉ、そうですか、、、詳しい筋は忘れていますが、たぶん、おそらく、『ふりだしに戻る』からお読みになるほうがよろしいかと。
でも、どぉかなあ~、ファンタジー色が強くて、古き良きアメリカ(ニューヨーク)への、かなり懐古趣味でもあって。気軽に「マイベスト30」って書きましたが、さてさて、改めて考えると、小松左京だけで10作品はランクインしそうだし、海外ものも10や20はすぐ、という感じで。『ゲイルズバーグの春を愛す』はもちろんステキな作品ですけど。ベスト100なら間違いないけれど。

レンタルビデオ(近頃はDVDですね)を相方と一緒に観るのは、これも夢に近いかも。なかなか二人の都合が合わず。お互い、月-金/9-5時のスタイルではないのでね。いまは「L change the WorLd」を希望しているんですが、しばらく難しそう。

そんなわけで、実は彼女も修羅場ってるんですが、あと1週間ほどは、どうあがいても脱出できず。でも、そゆパターンに慣れてますから。

投稿: hiperk | 2008年7月12日 (土) 04時04分

すみません、些細なことかもしれないけれど、気になって。
>人がさっさと帰ることは全然気になりません
でも、目線の範囲内だと、スクリーンの邪魔になりますよね。それに、映画館内が、ざわつくでしょ? そんな経験は、されていないのかな。
ぼくは、25年も前ですが「戦場のメリークリスマス」の際に、それをやられて、日本で映画館に行くのは久しぶりのことだったので、あぁ~日本人の道徳観も地に落ちたと、アタマにきて、そんなことが2、3回続き、そのうえ、「ガサゴソ、ポリポリ」もあるし、「ひそひそ」もね、映画館での鑑賞を基本的に諦めました。
ちょうど、そのころからビデオレンタルが始まりましたしね。当時はまだ、1本1000円以上だったかなあ~、それも1泊で。いまや、1週間でも200~400円程度に。うれしい時代です。

投稿: hiperk | 2008年7月12日 (土) 04時05分

なに、このところパソコンを新しくし、WORD内の文字変換の学習をパソコンにさせていたりして、あちこちのブログやHPをのぞくだけでコメントは避けていました。

自分のHPもとどこおっていて。
それに、ハヤカワを愚生が楽しんだのはもう50年ほど前?で、話について行かれない…ということもあり。
その頃のハヤカワって、洒落ていて、「知的アクセサリー」って感じでした。左翼の本とは全く違う雰囲気があり、こちらが何やら知識階級のツールって感じでした。その前は「リーダーズダイジェスト」::: こんな昔話をするようになってはおしまいかな。皆さんのことではない!!!

投稿: seigu | 2008年7月12日 (土) 14時24分

>それに、映画館内が、ざわつくでしょ? そんな経験は、されていないのかな。

あぁ、そういえば、昔は感じていましたね・・・そう、昔は映画館も人がいっぱい入っていましたものね
最近私がよく映画を観に行くシネコンは、そんなに人も観に来ていなくて(平日の昼間ですから^^)、いつもゆったりと観ているのでそんなふうに感じなかったんですね・・きっと^^

今夜は久しぶりにseiguさんにお会いできて、よかったですhappy01

投稿: vanilla | 2008年7月13日 (日) 23時53分

あぁ、そういえば、、、こないだ「相棒」を相方と観に行ったおり、公開から日も浅く東京の映画館では入れない人も続出、というので覚悟を決めていたのに我が街・千葉では、ん? 時間を間違えたかと思ってしまったほどに、あっさりと。300席のキャパに、おそらく1~2割程度。果たして、エンドタイトルの段階で席を立つ姿、チラホラと。でも、遠くだったし、邪魔にはならなかった。
なるほど。混雑しているシアターでこそ、当方のグチも成立するわけで。イナカのメリット、最大限に享受。いや、千葉市内といっても、本籍地・東京の渋谷に比べたら、そんなもの。。。

投稿: hiperk | 2008年7月17日 (木) 17時36分

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