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2007年11月12日 (月)

インタビューする側

ところで、ぼくは数年前、インタビューされる側になったことがある。とある団体の代表を5年間ほど務めていたので、その趣旨に関わるテーマで、新聞をはじめ雑誌、テレビなどから「話を聞かせてくれ」と。トータルで三桁弱だったか、ほぼ2年くらいの間に集中したので、ある週などは毎日のように。1日2件もあった。面白い経験だった。だって、「する側」から「される側」だもの。それに、「する側」も続けていたし。
ぼくの「インタビュー」についての「美学」、うむ、またオーバーな表現してるなあ~、前日ラストの「醍醐味」、それを感じるための要素みたいなものは、とにかく、相手の話を聴く。当たり前だけどね。言い換えると、喋らせる。それも当然かな。でもね、人って、なかなか話をしないものなのだ。ホントだよ。話題の女優の「別に……」は極端だけど、それに近い反応は、一般人の場合、珍しくない。こちらがペンとノート(最近ではテレコ)を手にしていると、やはり身構えるんだよね。何も企業秘密をバラせと迫っているわけでも、大スクープを狙っているわけでなし。それでも、企業人だと、下手なこと口走ったら、立場上マズイのではないかと思ってしまうみたいで。
だからまず、そうしたバリケードを取り除く必要があるわけなんだが、いったん「普段着」になってくれると、よほどの人でなければ、口は滑らかになる。こちらの訊きたいことにも素直に答えてくれる。30分くらい過ぎて、その場の雰囲気に馴染んでくると、ちょっぴり秘密のことも口にする。もちんろ他愛の無いレベルだ。「会社には言ってませんが、実は第2志望の就職希望先でしてね」なんて、罪の無いことだが、そうした「告白」が登場すると、インタビューとしては成功である。
なかには、ストッパーが完全に外れて、とめどなく喋り続ける人もいる。その場合は逆に、要点だけに絞ってもらうよう誘導しなければいけない。勝手な言い方だが、いくら話が面白くても、本筋に無関係だと、ただ時間だけを消費していくだけだ。まあ、状況が許せば、2時間でも3時間でもつきあうし、それもまた楽しいけれど。そんなチャンスはなかなか。たいていは時間制限がある。
これは、しかし、インタビューの「手法」というよりは、ぼくの好みの問題でもあるかもしれない。編集者としても多数の取材に同行したが、そうだなあ~、半数以上は「脱線」しない。多少の膨らみはあっても、本線に戻し、聴きたいことを聴こうとする人が多数派。もちろん限られた時間、それが正しいのではある。ぼくだって、30分しかないという条件なら、最小限の「前説」だけにするし、大切な質問を次々に繰り出す。ただ、そういうインタビューは、できることなら、あまりしたくない。
なるべく、その相手のバックグランドも知りたいのだ。性格というかクセというか、そういう情報も手に入れておきたいのだ。でないと、その人の「イエス」や「まあ、ね」は、どれほどの「肯定」なのかどうか、確信が持てない。日本人は、とかく曖昧な言い方を好む。「そーゆーことは、あんまり、ないですね」は、多くの場合、全否定である。この「あんまり」は、いまふうの「みたいなぁ~」と変わりないのだ。
こうしたところにこだわるのは、たぶん、トラウマなのだ。ロサンゼルス時代、初めてトップ記事を任された。日系銀行の活動について、いろいろと取材し、支店長クラスの人にもインタビューした。記者という仕事のスゴイところは、駆け出しのぼくでも、取材は単独。先輩・上司が随行するなんて、ない。だから、ぼくが書いた原稿の責任は、ぼくしかとれない。で、張り切って書いた記事に、当該支店長からクレームがついた。「そんなことは話していない」と。詳細は省くが、ぼくの受け止め方の間違いだった。相手の言葉のニュアンスを汲み取りきれなかったのである。
以来、ぼくは、その1時間に全神経を集中させる。「対決」だと思っている。だけど本当の「闘い」であってはいけない。最終的には「友達との雑談」のようにインタビューに応えてくれることだ。それでも、いくらフレンドリーだからといって安心もできない。本当の友人ではないのだから、ときおり「ウソ」が混じるのである。とくに「昔はこうだった」話には、間違いなく誇張が含まれるといっていい。これはぼくの持論「人は自らの歴史を改竄する」につながるのだが、いまは触れない。とにかく、誤解もあるし、完璧な嘘とは断言できないまでも、実際よりも大袈裟な表現を、人はするものだ。そこには、気をつけなければならない。
おや、冒頭の話はどこへいった? 仕方がない。「明日へ続く」と。

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