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2007年7月20日 (金)

荷物持ちの自省

8階のお中元コーナーで相方と待ち合わせ。後れを取った小生、やや慌て気味で、エレベータに乗った。首都圏とはいえ、東京のみ一極集中、当地のデパートは空いている。平日の午後だし。同乗者は、ご年配の数人だけ。このまま階上まで直行してくれるといいんだが……。
なぜか、2階で停まった。ハコの中央に杖を突く老婦、「4階ですか?」と、誰にともなく。声はしっかりとしている。似た年恰好の女性が「違いますよ」とサポート。ちょっぴり若手のぼく、内心で、見りゃわかるだろ、表示ランプは「2」じゃん……。果たして乗り降りもなく扉が閉まる。なんで停まったんだよぉ~と、なおも心中で毒づく。相方を待たせてはとの思いゆえ。いや焦り? もしかして恐怖?(^^;)
そして4階。親切女性が「4階ですよ」と教える。足下の不都合な老婦、またもや「4階ですか、4階ですか」と。これはもう独り言だよな~。4階であることを認識したのか、しかし、礼の言葉一切なく、ゆっくりと出て行く。ふと思う、目も悪いのか。だが、自動アナウンスが「4階です」と知らせている。ちゃんと聴けば、わかるはず。親切女性の言葉は聞こえたのではないか。
エレベータが再び動き出す。上昇するハコの中で、ふっと。我が母を思い、もしかしたら耳も不自由なのかもしれない、と。トシを取ると難聴気味になってしまうみたいだ。母との会話は最近、ついつい怒鳴っているかのような。すると「そんなにキツク言わないでよ」と嘆く我が母、ワガママ……。
とにかくも。階数表示がよく見えず、ヒヤリングにも問題があるのだとしたら、くだんの老婦のその振る舞い、文句の対象としてはバチあたりというもの。そう思い直し、改めて、エレベータを点検する。うん、まったく不親切だ。階数の表示ランプは、何色といえばいいのか、明かりの色というか、薄いベージュっぽいような、オフホワイトかな。これは、けっこう見にくいかも。もっとハッキリした色にすればいいのに。
階数を知らせる案内も、とくには大きな声ではない。ハコの中がざわついていたら聞こえなくても当然だろう。このときは、辺り構わずお喋りするオバサン族なく、まあ、静かとはいえる状態。けれど、オフクロには聴きづらいかも。
ドアが開いても、そこが何階なのか、すぐには判断できない。目と耳との能力が低下していたら、認識のしようがないことに気づいた。たとえば、乗り降りの床面に、デカイ文字で「8階」とか明記しておけば、かなりの助けになろう。そういう補助が施されていないのは、では、何故か。
簡単なことだ。真の意味で「ユニバーサル・デザイン」を考えるやつなんか、いないんだ。世界に冠たる日本の、老舗の力を保持しているはずの、三越ですら、この体たらく。デパートのトップ・ブランドは、どこを照らしているのか。かっこよく「バリアフリー」という言葉で、そんなフリしているかもしれないけれど、担当者は若くて「五体満足」で、視覚・聴覚に何のトラブルも抱えていないのだ。脳力は不自由だとしてもね。
いや、エラソーに言っているつもりはない。ぼくにしても同罪だもの。かの老婦の戸惑いを、他人事とみた。自らの問題として、認識することができなかったんだ。冒頭に書いたように、瞬間、「なんだ、このバーサン」というのが正直な気持ち。ぼくも、実のところ、老眼で悩み始めて数年、耳はまだ何とか健在だが、ほんの小さな段差に躓くこと頻り、そんな年齢に達しているというのにね。はたちのころの若造のぼくには、まったく想像すらできなかった現実。齢を重ねるとは、こういうことなんだね。
蛇足・「荷物持ち」と書いたが、実際には、デパートから発送するので、手ぶらでした。お赦しを、相方。

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コメント

大拙は、しっかりと荷物を持ってビアトリス夫人と歩いていたそうです。もちろん、ビアトリス夫人は手ぶら。

エレベーター内の観察リアル。よく眼に焼きこんでおいてください。

お母さんにはテンポを少し落とし、重いトーンで話してください。そうしておられるでしょうが。

上野千鶴子さんの『おひとりさまの老後』(法研)という本を立ち読みでも結構ですから読んでみてください。当方は、しばらく先に新聞に紹介を書きます。

投稿: seigu | 2007年7月20日 (金) 11時13分

フェミニストseigu翁のお連れ合いも、たぶん、手ぶら? 当方は、単に、荷物持ちていどのことしかサポートできず、の心境。
ご紹介の本、立ち読みしてみます。なにやら身につまされる題名、いささか怖くもあり。

投稿: hiperk | 2007年7月20日 (金) 17時38分

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