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2006年12月14日 (木)

「やり直す」ことは難しい

「ザ・フォッグ」を観た。言わずと知れた、でもないかなあ~、鬼才ジョン・カーペンター監督の1979年作品の、リメイク版である。期待した。DVDを待ちわびた。そして、裏切られた。ちっとも怖くないのだ。金返せ。時間も返せ。オリジナルは、めっちゃビビったぞ。監督は変わっていたが、カーペンターが製作総指揮で名を残しているので、あれから30年近く、CG技術も進歩したことだし、まさかホラーがコメディになってしまうなんてことはありえないし、スゴイ映画になっていると思った。前述した「ポセイドン」は特殊効果と引き換えに人間ドラマを捨て、失敗した。こちらは、ホラー以外の何ものでもないから、よもや二の舞とは予想しなかった。「フォッグ」は、ホラー映画のマイ・ベストスリーに入るほどの名作だし。

それなのに……。どしがたい、駄作だった。何かがひたひたと迫り来るコワサ、それがちっとも描けてないんだもの、がっかり。ホラーの走りみたいな存在で、当時、すでに「エクソシスト」が大反響、ゾンビものが生まれ、その後、「13日の金曜日」や「エルム街の悪夢」シリーズはじめ、続々と名作が世に送り出される。しかし、そうした、いわば恐怖の素がそれなりに明らかな映画と異なり、「フォッグ」は、その名の通り、無機質な「霧」が主人公で、もちろん、その裏側には人間の恨みや亡霊たちも存在するのではあるけれど、霧の視覚効果が恐怖心を煽った。ストーリーも複雑ではない。そのうえ、ラストに最後の悲鳴を誘発するどんでん返し的シーンも。ただの焼き直しでも十分なはずだった。

映画評のブログではないので、原因を探るマネはしない。ただ、リメイクというものは、想像以上に難しいものだと思い知らされる。「原典」を上回る好評がなかなか得られないようだ。「宇宙戦争」では文字通りのSFXの進化を見せつけられたが、一方で話が劣化。「日本沈没」は未見も、劇場に足を運ぶだけの意欲がついに湧かなかった。映像は(当然!)見事らしいが、ストーリー展開が酷いと聞く。「猿の惑星」2001年版は監督によれば「リ・イマジネーション」ということで、それなりの感激は与えてくれたけれど、やはり1968年版の衝撃には叶わない。「キングコング」はオリジナルが1933年だから2005年版の視覚効果が抜群なのは当たり前、たしかに目を見張る。映画としての出来栄えは良かったと思う。しかし、ぼくは1976年版のほうが好きだ。主演のナオミ・ワッツは好演だけど、76年のジェシカ・ラングの哀愁に満ちた演技の素晴らしさには及ばない。リメイクへの評価には、そんな、役者の要素も加わる。

筋書きがまったく変更されているのならともかくも、基本的には「ネタバレ」なのである。どれほど「化粧」しようと「素性」は割れているわけだ。生半可な化け方では、観客を誤魔化せない。CGなんて、所詮「メイク」にすぎない。たとえ妖艶な女性に見せようとも、役者が男だと判っているのだから、よほどの「トリック」がなければ、本気にできない。「三丁目の夕日」で、建築中の東京タワーをいかに実物らしく見せようと「絵」にすぎないことは皆、知っている。つまり、それらは、背景画なのだ。背景の前にある「何か」が本物らしくなくては無意味である。一部の例外を除けば、映画はドラマであろう。ドラマツルギーが命ではないか。視覚効果もCGも「背景画」にすぎないのだから、もちろん舞台装置もとても大切だけど、しかし、「本線」をきちんと演じてくれないことには、とても感情移入できず、騙されたことを喜べず。

同様のことは「お涙ちょうだい」映画にも当てはまる。「涙を誘う悲しいシーン」が効果的なのは論を待たない。しかし、その前に、たとえば「人の死」が悲しいのは「命」への賛歌があるからだ。「生」、つまり「人生」がしっかりと描かれていなければ虚構の「死」になど何の価値もない。昨今の「涙を誘う」映画は事前に、そうしたストーリーの肝が、バカみたいな前宣伝のせいで、ほとんど露見していることが多い。「ネタバレ」同然なのだ。「リメイク」を「ネタバレのやり直し」とするならば、古今東西の本格派推理小説の名作を手本にしろと言いたい。二転三転の大トリックよりも何よりも、優れた推理小説は「小説」としてまず成立している。仕掛けだけをどんなにCG活用でやり直しても、無意味なのだ。基本的な骨格が美しければ、何度つくり直しても、その美しさが翳ることはない。

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